玄侑宗久 著『さすらいの仏教語』
(中公新書)
【あまのじゃく】
(70p.)通常は「天の邪鬼」と書く。四天王などの足下に、踏みつけられた姿が有名である。ご本尊を守るために東西南北に配されている守護神が四天王だが、その四天王が手こずっているのだから相当に厄介である。… 昔は「死んじまえ、ばかやろう」と言われて「なにくそ」と発憤し、「あんたなんか出てけ、この役立たず」と言われても飲み続ける親父が大勢いた。相手が元気に否定すると思い込んでいるからこそ、極端なことも言えたのではないだろうか。… 思えばあまのじゃくこそが、日本文化に深みを与えてきたのではないか。どんな考え方も、全員が賛成するようでは気味が悪い。あまのじゃくがいることで、我々の文化は柔軟に深まった。じつはあまのじゃくのほうも、踏みつけられてエネルギーを得ているのではないか。